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頑張っていないと自分に価値がないと思っていた

頑張っていないと自分に価値がないと思っていた

大学時代まで陸上競技に打ち込んでいた志村さん。もっと速く走らないといけない、負けてはいけないという思いから、「切羽詰まった気持ちで走っていました」と当時を振り返ります。

「追い込んで辛い思いをしたほうが強くなる、頑張っていないと自分に価値がないと思っていました。だから楽しいと感じるなんてとんでもないというか。同じレーンに並んでいるライバルの誰よりも努力して、一切ミスをせずに試合を迎えられたという自信がないとスタートライン立てない。そう考えるくらい完璧主義でした」

「辛い=頑張っている=価値がある」と考えていた志村さんにとって、楽しい気持ちが生まれることは頑張りきれていないことと同義でした。それでも走ることが大好きだったから、頑張り続けられたのだといいます。

「苦しかったけれど、大会で結果が出たり、自己ベストを更新できたり、そういう瞬間だけは自分のことを認められたんです。走っている自分や努力をしている自分のことが好きでしたし、走るのをやめたいと思うことは一度もありませんでした」

そんな思いを抱きつつも、大学で競技を引退すると決断。凄まじい努力をしていたからこそ、期限を決めないと気持ちが続かなかったのだといいます。大学卒業後はヨガ講師として就職。しかし、うつ病を発症して休職することになってしまいました。

「ヨガ哲学には『ありのままの自分を認めましょう、頑張らなくていいです』という考え方があるのですが、それを認めてしまうとこれまで頑張り続けてきた自分の人生を否定してしまうような気がしたんです。インストラクターだからヨガ哲学を生徒さんに伝えないといけないのですが、共感できない教えを生徒さんに伝えることもストレスで。日々のストレスの積み重ねで心が折れてしまい、休職することになりました」

頑張らない自分を認められるようになったから、
人にも優しくできる

頑張らない自分を認められるようになったから、人にも優しくできる

1ヶ月の休職期間中は、塞ぎ込んで引きこもっていた志村さん。そんななか、ふと「一歩外に出て走ってみようかな」という気持ちが湧いてきました。

「それまで全然走っていなかったのですが、ふと思い立って少し走ってみると、だんだん自分の心が整って少しずつ元気になっていったんです。勝ち負けではなく、ゆっくりゆっくり走るのも楽しいのかもしれないと気づいて、そこから長距離のランニングを始めました」

時を同じくして友人であるインフルエンサー / ランニングアドバイザーの三津家貴也さんから「YouTubeを始めてみたら? 1本動画を撮ってみてよ」と宿題を出されたことがきっかけで志村さんのライフスタイルが大きく変化したといいます。

「私自身、このままではいけない、何か変えなければと思っていたんです。正直YouTubeなんてやりたくないと思っていたのですが(笑)、動画を1本世の中に出してみたら、それをきっかけにいろいろな方に動画を見ていただけて、人生がどんどん変わっていきました」

現在は「頑張りすぎなくていい」というメッセージとともにスポーツの楽しさを発信している志村さん。頑張っていた完璧主義の彼女が「頑張らなくていい」という境地に達したのは、粉骨砕身の努力があったからこそだといいます。

「頑張っていた当時の自分のこと、今はすごく好きなんです。当時の厳しい練習や頑張っていた自分も否定せず、あの経験があったから今も走ることを楽しいと思える。頑張らずに自分の思いのままにいることが何かを長く続けられるコツだと気づいたのも、頑張った自分がいたからです」

かつては勝つために走っていましたが、今の志村さんにとって走ることは心と体を整えられる唯一の時間。動画編集やSNSでの発信など、すべてを自分でこなす志村さんにとって、デジタルデトックスにもなっており、「鼓動や呼吸を感じながら走るのがとても好きなんです」と笑顔で話します。

「走る時間は仕事の時間とはっきり区切られるのですごくリフレッシュできるんです。走らないままでいるとずーっと何かしらやっていて頭のなかもいっぱいで、すべてが中途半端になってしまう気がして。忙しくても外に出て、短くてもいいから走ると一日をすっきり過ごせます」

心、足音、呼吸、自分が発するさまざまなサインに耳を傾けて、自分自身と対話する。走ることで自分に向き合う時間が増えたからこそ、周囲の人にも優しくなれたといいます。

「競技をしていた時は一生懸命で全然余裕がなくて、家族にも当たりが強かったと思います。自分にも他人にもすごく厳しかった。ただ、今は昔の自分を参考にしてほしいくらい自分に甘くてだらしないですね(笑)。時間はかかりましたけど頑張らない自分を認められるようになったから、人にも優しくできるようになりました」

頑張っていなくても、
自分を犠牲にしていなくても、
価値がある

頑張っていなくても、自分を犠牲にしていなくても、価値がある

頑張ることが正義だという不文律が立ち込めている世の中で、自分のペースを見失ってしまう人もきっといるでしょう。そんな世界を生きるうえで、志村さんは自分の心を大切にするためにこんなことを意識しているといいます。

「仕事を辞めたくなってしまったり、精神的な病にかかってしまったりすることを避けるためには、一日一日に感じる小さな違和感を見逃さずに受け止めることが大切だと思います。走っているとフィジカルとメンタルの小さな変化に気づけるんですよ。私は無理をしていると呼吸がすごく浅くなるのですが、走ると強制的に呼吸できる。走る習慣がない方も、ストレスを感じたら呼吸を意識するだけでもちょっと心身が整うかもしれません」

「やっぱり走ることって自分の居場所なんですよね」としみじみと語る志村さん。

「昔も今も、ランニングは自分を表現する場であり、癒しや安心をくれる居場所です。頑張っていないと自分に価値がないと思い込んでいたけれど、決してそんなことはないです。走り方が変わってそう実感しました。頑張っていなくても、自分を犠牲にしていなくても、自分に価値があるということにみなさんにも気づいてほしいですね」

頑張る自分も頑張らない自分も、すべて愛おしい自分であると認めて、今、世界をひた走る志村さん。最後に、どんな自分でも受け入れるためには、「自分との小さな約束を守ることが大切」だと教えてくれました。

「私の場合は、たとえば明日絶対ゴミを出すとか、お風呂掃除するとか、それくらいの小さな目標を一つずつ叶えることで心が元気になっていきました。昔は全国大会で入賞しないと自分には価値がないと思っていましたが、小さな目標を叶えていくことで、少しずつ自分を認めていけるんだと思います」

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