ありきたりな美の形容におさまらず、自由でしなやかな精神を持った「うつくしい人」を訪ねるこの企画。第4回目にご登場いただくのは、セルフケア美容家の本島彩帆里さんです。産後マイナス20kgに成功した自身の体験を生かしてダイエット情報を発信するとともに、セルフケアブランド「eume(イウミー)」をプロデュース。コンプレックスと向き合う中で気づいた心身のケアの大切さや、その軸となる「自己効力感」の育み方について伺いました。
産後ダイエットに成功したことを活かして、美容家として幅広く活躍する本島さん。以前は、エステサロンでセラピストとして働き、お客様を美しくすることに従事する一方、自分をケアすることは苦手だったと語ります。
「思春期の頃から外見には大きなコンプレックスがあり、あらゆるダイエットや美容法を試しては、リバウンドの繰り返し。太っているだけじゃなく、肌も荒れ、便秘がち。体調がいい日なんて、月に一回あればいいという感じでした。あの頃はそれが普通だったのですが、今考えると身も心も暗闇をもがくようなつらい時期だった思います」
なんとかしたいけれど “できる”とも思えない。仕事の忙しさを理由に、自分と向き合う余裕もなく、そもそもそのやり方すらわからなかった、という本島さん。
「何事も “私なんか” から始まるんです。でも一方で、仕事に対する意欲 だけは大きくて、それは自信がないからこそ、『結果を出さなきゃ』『誰かに評価してもらわないと価値がない』と、焦っていたんだと思います。今思い返せば、全部がちぐはぐで、常にいっぱいいっぱいでした。そのうえ自分の気持ちを感じるのが苦手で、何か自分の意見を聞かれたり話そうとしたりすると、言葉より涙が溢れて泣き出してしまうような子だったんです」
そんな状態を上司からも心配され、カウンセリングを勧められたことが、大きなきっかけに。そこでは、「自分を知ることからサポートしてもらった」と、本島さん。何が心地よくて、しんどくなるのか…一つ一つ気づくことから始め、疲れてしまう人から距離をとったり、自分の安心できる人との関係を育んでいったといいます。
「一見別のものに見えても、自分との関わり方全てが、体や心だけでなく人間関係や仕事にも影響しあっているのだと実感しました。自分を大切にするほど、周りの人たちが優しくて安全な人が増えていったし、自分表現できるようになっていったんです」
そんななか、結婚、出産を経験したことで、これまでの習慣も変えざるを得なくなります。
「それまでは断食をして一気に体重を落としたり、いきなりジムに通い出したりと、『0か100か』という、結局続けられないような極端なことばかりしていました。でも、子どもが生まれたからは、そうした気力もお金も時間もかけられなくなくなってしまって。それで今ある時間の中でできることをと、例えば食事も子どもベースで自分の体にもいいものを摂るようにするとか、空き時間にちょっとストレッチするとか、10〜30%くらいの力でもできることをするようにしました。そうすると、無理がないからか続けられ、結果、自然と痩せることができたんです」
習慣や体質を無理なく改善し、20kgのダイエットに成功した本島さん。その大きな変化を成し遂げるために、一番大事だったのは「自己効力感」だと気づいたそう。「自己効力感」とは、どんなものなのでしょうか?
「簡単にいうと、『自分はやればできる』という感覚を持てる力のことです。よく混同されがちな『自己肯定感』は 『私はわたしのままで価値がある』という、無条件に自分を受容できる感覚を指します。一方で、自己効力感は 結果ではなく、プロセスに焦点を当て、小さなできたことを積み重ねていくことによって『私ならできる』という信頼感を育んでいけるんです」
「自分との信頼関係が育まれることによって、『自己肯定感』も自然と感じられるようになってくる」と本島さん。
自己効力感は『成長する力を持った種』、自己肯定感は『咲いた花』のようなものかもしれません。種(自己効力感)があれば、『自分はやればできる』と言じることができ、まるで自らに水をあげるように、日々の行動を積み重ねることができます。その積み重ねがやがて芽を出し、成長し、花(自己肯定感)を咲かせることに繋がっていきます。大切なのは、すぐに花が咲くかどうかではなく、種を育て続けること。小さな『できた』という体験を積み重ねることで、少しずつ芽が伸び、できることが増えるにつれて、自分を信じる力も育ち、それがやがて自己肯定感へとつながっていきます。
多くの人は、『自己効力感』というプロセスを抜きにして、『自己肯定感を高めること』ばかりに注目してしまいがちかもしれない一本島さんはそう考察します。
『自分を愛そう』とか、『鏡を見て、自分をかわいいと言いましょう、大切に扱おう』と言われても、そもそもそれができないからこそ、悩んでいる人が多いのではないでしょうか。感じられないものを無理に育むのは難しいものですよね。まずは、畑を耕し、種をまくことから始めることが大切だと思います。
そこで、「自己効力感」を育むための大切なポイントを教えてくれました。
「日々の中で、どうしても反省ばかりに意識が向いてしまうことってありますよね。例えば、夜、布団に入ってから『あの時、こう言えばよかった』『今日これができなかった』と後悔や反省を巡らせてしまう人は多いのではないでしょうか。それ自体は悪いことではないのですが、反省だけで終わるのではなく、その日にできたことにも意識を向けて確認することが、種をまいて水をあげることにつながります。小さなことでもいいので"今日できたこと"を1〜3つくらい確認する練習をしてほしいんです。それだけでも、自分のできることに気づき、自己効力感を育む一歩になります」
反省点を具体的に書き出してから、それを「できたこと」に変換するのも効果的だとか。
「『今日は何もしていない、寝てばかりだった』と思ってしまう日もありますよね。でも、『体に必要な休息をしっかり取ることができた』と、前向きに捉え直すこともできるはず。『甘いものを食べぎてしまった』も、『前よりも食べ過ぎてしまう頻度は減った』など、反省の中でできたことや、以前より改善できた点などに意識を向け、変換してみるんです。そうすると、自然と視点が変わってきます。このとき注意したいのが、“できた”の基準を、メディアやSNSの中の誰かと比べないということ。比べるなら、去年の自分や昨日の自分と、です。きっと少しずつでも変化している部分に気づけると思います」
「自己効力感」を育む大切さを伝えたいと、2017年に本島さんが立ち上げた、セルフケアブランド「eume(イウミー)」です。テーマは「“できた”を増やす」こと。これまでダイエット美容家として、できるだけ気軽に取り組めるエクササイズやマッサージといった情報を発信してきましたが、それでも「継続できない」「ハードルが高い」といった声をよく耳にしていたのだとか。
そこで、より多くの人の気持ちや生活に寄り添えるものはできないかと、最初に開発したのが、光電子®繊維の遠赤外線の効果と一般医療機器の着圧効果で、履くだけでマッサージのような効果を得られる『めぐりソックス』です。
「私自身もそうでしたが、理想の体型になるには、バランスのいい食事に適度な運動、寝る前のマッサージがいい、なんてことは、もうわかっているんですよね。でも、習慣化できないから苦しんでいる。忙しいしい毎日の中でセルフケアまで頑張るエネルギーがないのは自然なことだと思います。でも変わりたい。そこで、毎日マッサージはできなくても、5とか10くらいのエネルギーでできること、例えば、靴下を履くくらいならできるかもしれないと思ったんです」
「100できなかった自分をダメだと思うのではなく5とか10、できた事実をまず『できた』と認識してしてあげてほしい」と、本島さん。「こんなに忙しい中でもできた!」「履くだけですっきりした!」などの小さな成功体験を積み重ねていくことが、「自己効力感」を育むことにつながるはずだと語ります。
そんな「eume」が大切にするのは、最小限のエネルギーでできて、効果が大きいものや一石二鳥いいことがあるような製品作り。高い機能性だけじゃなく、使い続けたくなるような心地よさや、気分を上げてくれることだとか。
「私が『eume』を通じて届けたいのは、まさに自己効力感を育むセルフケアです。大切にしたいのは、若く見えるかどうか、痩せたかどうか、という結果だけではなく、“今の私が心地よいかどうか”やなりたい自分になる為に自分を信じ歩んでいくプロセスそのものを育むサポートができたらなと思っています。
自己否定で自分を追い込みながら頑張るのではなく、今の自分にOKをだしながら、よりなりたい方向になっていく。後者の方がずっと健全で、持続可能な自分との付き合い方だと感じます。そんな自分を受容し、大切にするセルフパートナーシップが深まっていくほど、雰囲気や醸し出すものも魅力的になっていくはずです」
新しいことに挑戦したい、変わりたい、と思いながらも一歩を踏み出せないという人に、本島さんは、こうアドバイスします。
「私もまだまだ理想とは程遠い自分です(笑) 。でも、自分を否定して必要以上に責めることや、極端に決めつけることは、ほとんどなくなりました。それは、できないなと感じることも、すぐ諦めずにできるようになるための行動を、『0か100か』ではなく10や20でも大切にしたり、『今日できる小さな行動を探したりして、積み重ねてきたから。それが自分との信頼関係につながり、最終的には大きな変化になっていくと感じます。
『できるだろう』と無理にハードルの高い目標を設定したり、根性論で結果ばかりを追い求めたりするのではなく、今の自分と心地よく付き合える瞬間を増やしながら、少しずつ『できる自分』を育んでいくことが大切です。
そうすることで、自分と仲良くなりながら、自分本来のペースで着実に結果を出していくことができます。たとえ時間がかかったとしても、自分との頼関係を育みながら積み重ねていく過程は、一瞬のジャンプで手に入る結果よりもずっと実感を伴い、これから先も成長し続ける土台となるのです。」
大事なのは結果にばかり目を向けるのではなく、今日歩くその過程。「自己否定で傷ついてる自分や、何かのために我慢や犠牲にしてる気持ちを置いてけぼりにしないでほしい」と、本島さんは微笑みながら言います。
「一つひとつの“できた”を大事にできたところから、自分とのパートナーシップを育む旅が始まっていくと思います」
セルフケアブランドeume
https://eume.jp/
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